Trend of Flowers

5月末から6月の始めにかけて約1週間、パリとロンドンに行ってきました。
パリに行くのは2年ぶり、お花屋さんにスタージュしていた頃から数えると、もう8年も経っているので、街を彩るパリのフラワーアレンジメントもだいぶ雰囲気も変わったのではと、興味津々で街を練り歩きました。

――パリのフラワーアレンジメント

私がスタージュしていたお花屋さんはその当時、とても大きく、有名ブランドのコレクションやパーティの装花なども請け負っていました。私はデコレーションチームに入れてもらうことができ、クリスチャンディオールを始めとしたいくつかのブランドの装花のお手伝いをしました。
 今では当たり前のアレンジですが、当時とても新鮮だったのは、ブーケ・ア・ラ・マンといった手の平の中で作り上げるブーケで、ラウンド型に作っていくものです。出来上がると葉を巻き付けたバケツに入れてそのアレンジは出来上がります。沢山のお花を使うだけではなく、そのお花の種類も色もふんだんで、色合わせの面からもとても良い勉強になったのを記憶しています。
女優のソフィー・マルソーに贈るためのブーケも、沢山の種類・色のお花の中に季節のフルーツを一緒にアレンジした、見たこともないような巨大なブーケで、とても素敵で感動したのを覚えています。
そのお花屋さんは形態と名前を変え、今もパリにあります。今回は久しぶりに御機嫌伺いに不意打ちでお店を探してみました。やっと見つけた新しい名前のお花屋さんには、残念ながらその日、ムッシューは不在でした。幸運なことにマダムがいらしたので一緒に記念に写真を撮ってもらうことができました。

さていよいよ本題に入りたいと思いますが、フラワーアレンジメントに触れる前に、少しインテリアについてお伝えしたいと思います。
最近、日本もコンテンポラリーでモダンなインテリアが流行っています。これは世界中で言えることで、パリでも最近リニューアルしたお店は全て、モダンでシンプルな作りでした。
フラワーアレンジメントは室内に飾るものなので、まずインテリアとのバランスを考慮し、その時代の流行を踏まえながら、花材・花器選び、配色、大きさなどを決めていかなければなりません。また自分で考えたテーマに基づいてアレンジすることも重要です。
今回の旅で見かけたパリのブティックに飾られていた花々は、流行が取り入れられ、どこでも白を基調としたシンプルな1種類の花しか使わないアレンジが飾られていました。特にテッポウユリが飾られている事が多く、シャープなすっとした姿が、今のミニマリズムな流れを象徴するに相応しいのでしょう。その他、白いランが飾られているパターンも多く見られました。花器はどこでもガラスのシンプルな花器が用いられており、ガラスを用いることでシャープでモダンなイメージがより引き立てられます。
どこのブティックでもガラスの器に白い花にグリーンが添えられているので、ある意味これがトレンドと知りつつも、少し面白味に欠けるような気がしました。
そんな中、唯一他店と違いを見せていたのは、Saint-Honoreにあるエルメス本店です。エルメス本店の入口には、昔ながらのパリ風のアレンジメントが大きく飾られていました。たった今、お庭から摘んできたかのような新鮮な黄色からオレンジ、コーラルピンクまでのグラデーションの様々なバラがこんもりと活けられており、近くによるとバラの香りがさわやかにしてきて、お店に入る人の気分を和らげてくれます。
以前のパリよりも生花を飾っているブティックが減ったような印象が強かったので、エルメスに入って少しホッとしました。
パリで一番素敵にお花を飾っていたところはGeorgeVにある、Four Seasons Hotel GeorgeVです。ここのフラワーアレンジを担当しているのはJeff Leatham氏です。彼のアレンジはガラスの花器に一種類のお花しかいけていないのに、大胆かつドラマティックで、とても洗練されています。本で初めて彼のアレンジを見た時には、その新鮮な個性に強烈な印象を受けました。彼がFour Seasons Hotelで活けていることは知らずにホテルに訪れた時は、「あっ!彼のお花だ!」とすぐに気づき、1人で興奮してしまいました。ホテルはとても広いので、そのスケールに見合うくらいのボリュームのガラスの花器を沢山置き、1つ1つにお花を活けてあるその姿はとてもダイナミックで印象的でした。
パリに4日程滞在後ロンドンに移ったのですが、彼のお花はBond StreetにあるBurberryのショップでも見ることが出来、国際的に活躍する人なのだと感心してしまいました。

――ロンドンのフラワーアレンジメント

ロンドンもパリとは違うモダンなお花が目につきました。
最近ロンドンにいくときは、One Aldwych というホテルに宿泊します。そこはとても今どきのコンテンポラリーでモダンなホテルです。エントランスの脇にバー&カフェのスペースがあり、夕方頃からは、いつもお洒落に敏感なオフィス帰りの人で混み合います。そこにはとても大きなクリエイティブなアレンジが飾られています。コンラン風のコンテンポラリーな空間なので、どのようにもデコレーションできるため、そこに飾られるお花が、部屋の印象を決定する重要なファクターなのですが、吹き抜けている巨大なスペースにちょうど良い大きさのアレンジがあり、その斬新なアレンジがあるお陰で、一段と洒落た空間となっているといった感じです。
このホテルの装花担当はホテルの脇に小さなお店、Stephen Woodhamsです。お部屋にも小振りではあるもののちょっと変わっているアレンジが置かれているので、この大きさならすぐに自宅にも取り入れられそうです。

クラシック、トラディショナル派では Claridges Hotelのティーサロンの中央に飾られているアレンジがとてもきれいでした。とても爽やかなグリーンと白のアレンジで、やはりホテルに入るとすぐそのアレンジが目に入るので、とても気分が落ち着きます。最終日にどうしてもそのアレンジが近くで見たいので、朝食をとりにClaridges Hotelに行きました。近くで良く見てみると、なんと生花と造花がミックスされて活けられているではありませんか。少し興醒めしながらも、「う~ん、賢いな」と感心してしまいました。これからの季節、お部屋に生花を飾ってもすぐに傷んでしまうので、自宅でも生花と造花をミックスしてみるといいかもしれません。


以上、パリとロンドンの最新フラワーアレンジメントについて触れてみました。
情報化時代の今、国と国との国境が無くなってきているので、流行っているものも同じ速度でそのまま入ってきます。
今回、パリとロンドンを比較すると、その国の独自性というものが少し失われつつあるような気がしました。良いもの、きれいなものは世界共通で受け入れられるのでしょうが、そこにプラス、個性、独自性を付け加えないと面白味に欠けてしまいます。
個性とは何かをもう一度見直し、トレンドとその人、国の個性をミックスして活けたら、アレンジも素晴らしいものになるのだと確信しました。

Text by Yumiko Sugawara