ROSE! ROSE! ROSE!

毎年子供の学校時代のお友達から電話を頂いて、「今年も薔薇が綺麗だから是非見に来てね」とお誘いがある。彼女の薔薇のガーデニング技術はプロ級で、それはそれは素晴らしい。毎年訪れては綺麗なバラを鑑賞するのを楽しみにしていたが、今年は我が家でも少しずつ増やしてきた薔薇がとても綺麗で、やっとその仲間入りをした。

薔薇の花の知識はほとんどないが、何故か子供のときからお花の中でもいちばん好きである。それもまっすぐな豪華なお行儀のよいものではなく、自由奔放に優雅に咲いている薔薇に惹かれる。まだ小学生の低学年のころ家の近くに薔薇園があり、淋しいところなので「寄り道絶対禁止」と母からきつく言われていたにもかかわらず、学校の帰り道には必ずバラ園に足を向けていた。花に話しかけたりよい香りを胸いっぱい吸ったりした記憶がいまだに鮮明にある。

子供たちがまだ小学生の頃、六本木のある古い洋館に2年ほど住んだことがあった。その家のよいところは、玄関に白いアイアンの大きなフェンスと大きなピンクの薔薇の大きな木があったこと。それだけで古い家でも私には最高のものだった。そしてその薔薇の大きな木の下は青いアジサイが一杯でとても素敵な感じだった。南仏の家のイメージだったが、その薔薇を摘んでは子供たちの学校や家のリビングに飾るのが小さな楽しみだった。ある日、私が抱えるほどのバラを母の会室に飾っていたら、冗談大好きな教頭先生が「美しいものにはトゲが有りますね」と笑いながら仰ったのを覚えている。未だに何をたとえたのか誰も分からないが、皆で大笑いした若かりし頃の思い出がある。

子供のときにわざわざ渋谷から田園調布の歯医者さんに通ったのものだった。その理由は先生のローズガーデンだった。今でも原田先生の薔薇づくりは歯科学会でも有名であり先生ご自身も大変お洒落な紳士だった。
海外にいくと必ず買ってくるボディークリームがある。その香りはもちろん多くの薔薇を使ったもので高価なもの。ここ一番という仕事のときにはこのクリームを全身に塗り気合を入れる。一日中その香りがほのかに香り、守られている感じである。

河口湖に自分の家を持ってから早くも4年経ったが、好きなお花を家の周りに植えることが夢だ。少し疲れていても、必ず近くの花市場に必ず足を向ける。最近は植木屋さんのおじさんやお兄さんたちとも仲良くなり、交渉の仕方も上手になった。今年は八重の淡いピンクのつつじと、ちょっと強めのピンクのつつじを桜祭りで沢山買い、玄関前に可愛らしく植えた。孫と一緒に泥んこになって植えてみたが、とても楽しい家になった。そして、昨年東京で失敗したラッパ水仙は、冬前に河口湖へ移したが、今年は見事にシンボルツリーの欅の木の下に咲いてくれた。来年はもっと増えるように愛情を注ごう。

一人で河口湖の家に行ったときは、朝食もとらずに花市場へいくことがある。陽だまりのあるデッキに座りトーストとココアを飲みながら「今日はどの花が私を呼んでくれているのかな?」と暫くお花を眺めている。はたから見るとひとりで淋しそうに見えるかもしれないが、私にとっては幸せな一時である。最初の一年目、二年目は、植木や花を買ってきては枯らしてしまうことが多かった。まだその土地の土の質や気候に慣れていなかったのである。近くにいらっしゃる薔薇の先生とも知り合い、真っ白な大輪の蔓薔薇を玄関ポーチに植えていただいたが、残念ながら一輪の花もつかない。薔薇はどうもこの土地には合わないらしい。大きな木の下ではなかなか難しいので鉢植えにして日当りのよいところに置いて楽しんでいる。真っ白なアナベルはこの土地を好み、毎年素晴らしい姿を見せてくれる。

昨年は仕方ないので娘のワゴンで河口湖で育てた薔薇の木を秋に東京の家にトゲだらけになって運び、テラコッタの大きな鉢に植え換えてみた。「とりあえず来年の春まで東京で預かりましょう」と、毎日肥料や虫がつかないよう世話をしたせいか、今年の春は見事に様々な種類の薔薇が咲いている。両手に抱えるほどの大きさになった大輪の薔薇や、一重のオレンジ色の薔薇。ショッキングピンクのイングリッシュローズ、妖艶な落ち着いた紫色の薔薇、純粋な白薔薇などいろいろな種類の薔薇が咲き出した。一人で喜んでいるのはもったいないということで、一輪咲いては「見て頂戴!!」と主人や子供達に毎日うるさく言うので、とうとう子供に「ママは本当に喜びを家族全員で共有したいのね!」とちょっと馬鹿にされた。40年一緒に住んで分からなかったことは、菊、薔薇、カーネーションしかわからない主人が、一番家のお花を楽しんでいたことである。昨年のアーチの薔薇が咲いた時期を手帳に書きとめたのにはびっくり。毎日家族より一足早く起きて水遣りは日課となった。

薔薇は万能薬であったと古代ギリシャ時代から知られてきた。すべての芳花植物は「熱」の質を負っているそうだが、例外として薔薇は「冷」の性質があるそうだ。脳の興奮や熱に効く。夜明けか朝のうちに、薔薇の花びらを摘み取って目に当てると、悪い体液が吸いだされ、視界がはっきりするとも言われている。また、小さな傷や爛れができたときには、薔薇の花びらをその上に置いて、そこから泡状の粘液が吸いだされるとも言われている。薔薇の花は私達の心の癒やしというだけではなく医療にも役に立っている。

薔薇のモチーフを使ったファブリック、香水、石鹸、アイロン水(息子のお土産で枕カバーやハンカチにアイロンかけをするときにふきかける)、アクセサリー、食器、絵画、いろいろの形で我が家では今風につかわれている。そろそろ仲良しの友人をお招きしてアフタヌーンティーも楽しみたいと思っている。フランボワーズのケーキを頂きながら綺麗な音楽と楽しい会話で盛り上がることだろう。そして氷の中に薔薇の花びらを入れたローズウォーターとともに・・・。

7月中旬に季節のお花のテーブルセッティングセミナーを開講いたします。
詳細は決まり次第お知らせいたしますので、 ご興味のある方はお問い合わせ下さい。
info@impression.ne.jp

Text by Akemi Sugawara